お知らせ
協会のシンボルマークが完成しました!
2019年10月21日(月)
デザイン:舟越一郎(京都市立芸術大学准教授)
1981年に設立された当協会は、2021年に創立40周年を迎えます。
このたび、協会をより多くの方に知っていただくために、新たに当協会のシンボルマークを作成しました。
〇(マル)、△(サンカク)、□(シカク)と一本の線で構成されたマークは、「京」の文字にも、また人の姿にも見え、京都を表すと同時に、創造的な営みとしての芸術と人間の関係を表しています。
また、マークの下に配された「藝文京」は、書家の故・秋山公道氏による揮毫です。当協会機関誌の創刊当初に題字として使われていたもので、当協会愛称「げいぶんきょう」の音に合わせ、「藝術」「文化」「京都」から一語ずつ取り合わせています。常用漢字の「芸」ではなく、〈手を添え、草や木の苗を植える〉〈人が手をかけ大事に育てることで、やがて豊かな実りにつながる〉という意味を持つ「藝」という漢字を使用しています。
新しいシンボルマークは、当協会の活動キーワードを示し、京都の地から文化と人のつながりを育み、成熟した社会の使命を表すものです。また、「げいぶんきょう」という愛称を伝え、多くの方に親しみを感じていただける協会でありたいという想いもこめられています。
理事長からのメッセージ
京都市芸術文化協会の役割
2021年に創立40周年を迎える当協会の使命は、変転する時代の流れの中で、ますます重要になっています。これからの社会を生き抜くには、文化芸術のもつ力と、多様な価値観の維持が重要になっていくからです。
人類は科学技術により、生活の物質的豊かさを飛躍的に増加させました。数学的論理性を基礎とした精緻なコンピューター(AI)が、我々の生活の隅々にまで入り込み、利便性を限りなく増しています。
しかし遠からぬ将来AI が、論理性を軸とする知的活動において人間の能力(左脳の力)を超え、人間によるコントロールが不能になる時が来ると言われています。弟子が習ったばかりの魔法を生半可な知識で発動し、自ら統御できずに痛い目に会うという、ゲーテの『魔法使いの弟子』を想起させます。
人間が人間として、AIに席巻されずに生きていくためは、AI 技術を身につけてその恩恵を最大限得るだけでなく、AIにはない感性や創造性を自ら磨かねばなりません。論理のみの世界では、人間はAIに勝てないからです。
人類の将来を考えるに当たってもうひとつのリスクは、英語の普遍語化です。世界共通語は効率的なコミュニケーションのためには不可欠です。しかしそれは放置すれば文化の一元化を招きます。英語で表現できなければ自分の主張を世界に届けられないという状況になれば、英語に翻訳できない、地域独特の美意識や思想が次第に忘れ去られ、失われるからです。文化や価値観の画一化が環境の変化に脆いことは歴史が示す通りです。
コンピューターと英語は、その圧倒的力によって相互に支え合いながら、人間社会を画一化していくベクトルを形成しているのです。
この問題から人類を救うのは、地域の文化や伝統を大切にすることです。地域に根差す歴史や文化が、日々の生活の中に沁み込んでいることによって、そこにしかない美意識が育ち、感性が磨かれ、継承されていきます。それがAI に対する人間の優位を保ち、ひいては国の文化を豊かにさせ、人類の文化に多様性に支えられた厚みを与えるのです。
とりわけ日本語や方言の奥には、日本文化独特の繊細な概念があります。日本語や京ことばそのものが消滅することはないと思いますが、英語に翻訳不能な微妙な言葉やニュアンスが消えてしまうことは十分あり得ます。「ゆかしい」、「はんなり」などの日本語や方言が使われなくなり、その概念が失われることは、日本人が日本人でなくなることを意味します。
当協会は、京都に根付く文化芸術を広く市民に日常的に認識して頂くと同時に、誰もがAIに対抗できるような鋭い感性をもち、京ことばや地域に伝わる伝統を大切にして、人類存続にとって重要な課題である多様性を与え続けるという極めて重要な使命を帯びていると申せましょう。
40周年を契機につくったロゴマークには、京都市芸術文化協会にはこのように、藝術と人間の営みの関係を深めるという、重要な任務があることを表すものなのです。
公益財団法人京都市芸術文化協会
理事長 近藤誠一